大嫌いでも大好きだから
「……!」
保健室を出ようと扉に手をかけたとき、
急に背後から腕を掴まれた。
「ちょっ…!?」
捕まえたのは、梓の手。
冷たくて大きなその手に、
力がこもる。
わたしは驚きで、
思考回路が停止してしまうようだった。
「…梓?」
後ろを見るのが怖い。
けれど確かに、
背中越しに彼を感じる。
こんなにも近くに、
梓がいるなんて…。
ふと吐息に触れる。
戸惑った瞬間、
「お前、鳳と付き合ってんの…?」
そんな彼の声が聞こえた。