大嫌いでも大好きだから
掴まれた腕が、痛い。


それよりも、
ピシピシとした空気が痛い。

心が痛い。




いつしか太陽は沈みかけて、オレンジ色がぼやけていく。


わたしは前が見えなかった。




「…あいつには気をつけろ」

「え?」


腕の痛みがなくなったかと思うと、
梓は手を放していた。


気をつけろ…?

わたしは梓の言葉をなぞる。
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