lotlotlot2-ふたつの道-
思いがけない再会
「イバーエ、イバーエ。」
誰かが叫んだ。しかし、村長の家には倒れている人間しかいない。声をかけられる訳がなかった。それでも声はまだ続く。
「イバーエ!」
しかし、ピクリとも動かない。それを感じ取ると、今度は顔をペロペロとなめだした。
「・・・。いかん、つい犬の頃の癖が・・・。」
声の主はメルツだ。イバーエの飼っている犬だ。
イバーエの祖父であるメルツは、るるんぱの手下に体を焼かれ、家を焼かれていた。簡単に言えば殺されたのだ。
しかし、生きていた。体は焼かれてしまったが、魂は生き残っていた。そして今、犬のメルツに宿っている。

理由はこうだ。
メルツは言術の達人だ。そこまでいくと、常人が思いつかないような言術も使いこなす。遅効言術もその一つだ。
自分が殺されるかもしれないと思っていたメルツは、あらかじめ自分に言術をかけていた。
“自分が殺された時に、魂を他の体に乗り換えさせる”
ただ、言葉が足りなかった。メルツの本来の想いを叶えるには、“人間の体に乗り換えさせる”と唱えておくべきだった。これが足りなかったために、犬の体に乗り換える事になってしまったのだ。

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