紅芳記
「殿っ!
お離しくださいませ!」
必死で抵抗すると、殿は一気にしゅんとなされ、母親に見放された幼子のように落ち込んでしまいました。
「小松は、わしが嫌なのか?」
「いえ、そのようなことは…。」
「ならば…。」
「殿、一体どうなされたのです?
いつもの殿らしくありませぬぞ?」
「そうか?」
「はい。」
「そんなことは………。」
殿は何かを言いかけ、急に黙られてしまいました。
「殿?」
近寄ってみますと、すやすやと気持ちよさそうに寝ておいでです。
「まあ…。」