紅芳記

「戻りとうない…か。」

「はい。」

もう、後には引けません。

引くつもりもありませんが。

殿はまた黙り込んでしまわれました。

何をお考えなのかしら。

「…何故か、問われぬのですか。」

今度は私から口を開きました。

「問いたい。
問いたいが、そなたが戻りとうないと言うならば、戻らずともよいと思うてしまうのじゃ。」

それは、一体どういう…。


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