紅芳記
話の決着が着いたので平八郎を呼ぼうということになり、近くに誰か居おりませぬかと襖を開けました。
しかし、辺りには誰もおりません。
平八郎が人払いでもしてくれたのかと思いましたが、次の間にも、庭にも人っ子一人おりませんでした。
これは、一体どういうことでしょう。
「殿、辺りに誰もおりませぬ。」
殿にお伝え申しますと、
「そちの弟もなかなかやりおるの。」
と、不敵な笑みを浮かべられ、
「そこに居るのは、徳川家の者か?」
と、天井に向かって仰せられました。