甘いクスリ
甘いクスリ/

苦手意識

 

「んぢゃ、おつかれー。」

一時間のレッスンを終えて、
教室の扉を開放する。


腹へった・・・

自販機で缶コーヒーを買って
プルトップをひく。

クシュッという小気味よい音が
小休憩の実感を与えてくれる。

今日は、祝日のせいだか、
生徒が少なくて、
いつも賑やかな
エントランスホールも
静かなもんだ。


「ぢゃ、センセ!
おっつ〜♪」

「センセ、またねっ」

俺の隣の部屋の扉が開いて、
ワラワラと生徒が出て来る中、
すっかり見慣れた
高校生二匹も飛び出してくる。

そうか。
今日、水曜日だもんな。


「あっ?!堂野センセー
ぢゃん。」

内、一匹、女の子の方が
俺を見つけて、腕にジャレつく。

小学生から見かけていた
コイツらなもんだから、
もう大人と呼べる
背格好になっても、
子供にしか見えなくて、
こんなスキンシップも、
何とも思わない。

「こら!啓太!七海!
さっさと帰れよ」

俺と二人がいる姿を
見つけた鷹尾が、
もっともらしい台詞を
吐きながら、近づいてくる。


・・・随分、警戒してんのな


いままで、散々
おちょくってきたかんな。

鷹尾は、
やんちゃな仔犬みたいなヤツで
暇つぶしに、よく弄ってたんだ。

最近、奴がソワソワしてる
理由も、大方、知ってる。

もうすぐ、
真月が帰ってくるから
だろう。


何ともカワイイ奴


 


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