甘いクスリ

自己嫌悪

 
 
コインパーキングに車を停め
都築のマンションへ向かおうと
最近、軽い土地勘のある方向へ
車を走らせる。


多分、ここからであれば、
5分くらいで着くはずだ。


三差路で、一時停止し
交差し走り出すスポーツカーを
見送る。

軽く合図して、
走り出そうとしたドライバーが
目が合い、瞳を見開いた。


ーーーマリだ。


彼女も俺に気づいた様子で
窓を開けながら、
俺にも開けるよう
ガラス越しに指示してくる。

小さなモーター音をたてて
動きを停止したそこから、
彼女は叫ぶ。


「晴紀!コトコちゃんの事、
大事にするのよっ!!」


えっ?


「いい加減、晴紀も
腹くくって生きなきゃね。

彼女に、
幸せにしてもらいなさい。」

って・・・


ええっ?



「あたしへの償いは
結婚式に呼んでくれて
なんか、派手にイッパツ
キメてくれればいい。」


そういって、マリは
笑みを浮かべた。


「私は、いつまでも
晴紀に、ふりまわされる程
ご苦労さんな人間じゃ
ないのよ。」



 
< 133 / 212 >

この作品をシェア

pagetop