甘いクスリ
 

最初のフレーズの四小節を
歓声の中で奏でれば、
黄色い声が、
スーッと小さくなった。


ああ・・・聴いてくれるんだ。


なんだか、そんな風に思って
俺は、散々、練習してきた
フレーズを次々と奏でる。


スポットライトが明るすぎて
俺のビー玉みたいな
薄い色彩の瞳じや
よく会場が見えないけど。

それでも、ハッキリとわかる。


いま、この空間が
一体になってる。


すげー、気持ちいい。


皆が、気持ちいいって
オーディエンスに至るまで
同じ感覚を共有してる。


スッゴイ経験してる。


体の内側から、何かが
グッとこみあげてくる。
なんか、もう、
叫びたくなる様な。

何て表現すれば、いいだろう?

隣でブレイクを入れるレンも
同じなんだろう。

一瞬上擦りかけた声を
落ち着かせるように
胸元をガシッと掴んで
冷静さを取り戻そうとしてる。


こんな経験なら、
多少なりともしてそうな、
狩野さんや鷹尾まで、
恍惚って目をしてて


マジ・・・すげぇ。


この曲、スッゲーよ



 
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