甘いクスリ
 
「都筑?迎えにきたんだけど。
おまえ、前でて来ないと、
完璧、気配消えてるぞ?」

壁紙の一部と化していた
私を見ながら、堂野先生は
困ったような笑顔を向けた。


きっと、
気を遣ってくれてる。


さっきから、鷹尾夫妻を
チラチラみてるんだもの。

私って、ダメだな・・・
ため息をついた。


「ここってポイントで、
見てほしい人にみてもらえれば
十分なんだから。

全部含めて、今の彼女に
なってるんだから、
個性って事でいいんだよ。
堂野センセ。」


私の事なんて
何も知らない癖に、
真月さんは、いう。

心の中で、は?って、
似合わない毒を吐いていた。

ら、


「もしそれが、
自分の人生を阻害してんなら、
自分自身が、あがけば
いいんだから。

不満なら、変わればいい。

それも出来ない癖に、
文句ばっかいってんだったら、
それは、単なるヘタレって
もんよ。」


心を読まれたかと思った。


「そんな奴が、挑んできたら
受けて立つわよ?
その時は、降伏なんざ、
一切許さないわよ。
ズタズタになるまで、
引きずり下ろしてやる。」

言って、笑みを浮かべた
真月さんに、恐怖した。


割と、真月さんて、
インパクトの強い個性で
怖がられてるんだけど。


ズルイ自分を
見抜かれた気がして
本気で、こわかった。



 



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