甘いクスリ

「何か勉強になるような
テクなんかの話した?」

狩野派の飲み会に、
参加しそびれる羽目になった為
情報収集も兼ね、
透の行動をチェックする。

奴は、俺に足りない物を、
ほぼ全て持っている訳で、
まさか、ここで透に
都築を持ってかれる訳に
いかないし。

しかも、奴は俺とタイプが
被ってる。

つまりは、鷹尾の様に、
おもちゃにされる可能性も
極めて高く、要注意な訳だ。


「特に何も。
でも、褒めてもらいましたよ」

「ああ、ギター?」


「・・・七海ちゃんの取扱。」

・・・なるほどな

あの狩野師匠を以っても
七海のマイペースには
振り回されてる訳だ。


「七海なあ。
黙ってギター弾いてりゃ
かわいいんだけどなあ。」


そういや、なんか
取引しようとか
いってたな。


なんだっけ?


くだらない話だった
記憶しかないし。
ま、いいか。


ひとり、回想に耽っていれば

「やっぱり、先生も
七海ちゃんの事、
かわいいと思う?」


何とも言えず、
にこやかな表情で
クルッと上半身を向けて
都築は問う。

「かわいいっても、あれだぞ?
何かこう未知の生物を
見てるみたいっつうかさ。」

タバコの火を、灰皿に
押し付けながら、そういえば、
都築はキョトンとした表情で、
俺をみた。


 
< 85 / 212 >

この作品をシェア

pagetop