こいのうた


私が忘れてたから、唯人君は言わなかったんだもん。




「殴らないよ…怒ってもない」



「本当に?…離れてもいかない…?」




「うん。離れていかない。ずっと唯人君のそばにいるよ」




「ずっと…」




「うん…ずっと…だから、そんな悲しい顔しないで…」





私はいつも唯人君がしてくれるみたいに唯人君の髪に優しく触れた。





「夜深…全部話すよ。俺と雅人のこと……」




「……話さなくてもいいよ。確かに、気になることはたくさんあるけど…」




「いや、言うよ。いつまでもこんなんじゃいけない…」




「……平気?」




「うん」





唯人君は頷くと、私をギュッと抱きしめた。




「多分長くなる。だから、マンションに帰って話したい。それじゃあダメかな?」




「ううん。いいよ。帰ろう…」




私は唯人君の手を強く握りしめた。




唯人君が私から離れないように……




私が唯人君から離れないように……








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