†神様の恋人†
それから2週間、わたしたちは宿屋で変わらぬ日々を過ごし、毎日のように礼拝堂を訪れては祈った。

既に2月が訪れていたけど、隊長の心が変わる気配は一向になく、目的を達成するのはいつになるか皆目見当もつかなかった。

娼館での一件以来、カミーユは忽然と姿を消していた。

宿も引き払い、わたしはきっとエリザさんを追いかけていったのだろうと思っていた。

それでいいと思った。

わたしはこれ以上、カミーユといるのが怖かったのかもしれない。



わたしとジャンヌは、この間にすっかり宿屋の看板娘になっていた。

「ミシェル~!オレにも酒ついでくれよ~」

「は~い。ただいま」

「ジャンヌはどこ行った?こっちにも頼むよ」

「はいはい。ここにいますよ」

全てのテーブルをびっしりと埋めている男たちから次々と声がかかる。

他の村からやってきた少女2人が働いているという評判を聞きつけて、宿に泊っていない近所の者までも晩酌をしにやってくることに、クロエおばさんは呆れながらも嬉しそうだ。

「全く、男どもはそれしか楽しみがないのかねぇ。ちょっとあんた!2人に手を出すんじゃないよ。ジャンヌとミシェルはわたしの大事な娘なんだからね」

クロエおばさんが、ジャンヌの肩に触れる男性を怒鳴り散らす。

「いいじゃねぇか!こんな美人の2人がお前の娘なわけねぇだろ?ジャンヌは“神の声”を聞いたんだって街じゃ評判の娘だ。ちょっと“神の娘”に、あやかりたいだけさ」

男性がポンとジャンヌの肩を叩いた。

その瞬間、ジャンヌは口を押さえて顔を歪ませると、宿屋の外へ走り出て行った。

「…ジャンヌ!?」





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