†神様の恋人†
次の日、わたしとジャンヌは宿屋の掃除と料理、水汲みの手伝いをしたあと、高台にそびえ立つヴォークルール城へと足を運んだ。

立派な城門をくぐると、礼拝堂への道と、ロベール隊長のいる城の中へ続く道があった。

「ジャンヌ…ロベール隊長ってやっぱ怖いの?」

監視の兵士の目が背中にちくちくと刺さるのを感じながら、ジャンヌの袖を引っ張って小声で話す。

「…怖いっていうか、気難しい印象だなぁ。でも王太子様に謁見するには、王太子様のご信頼を得ているロベール隊長のお許しは絶対なんだ。だから諦めないよ」

ジャンヌは颯爽と青のワンピースを翻しながら城の入り口に向かって歩く。

ジャンヌのその自信は一体どこからくるのか。

たった17歳の少女のジャンヌが、一介の羊飼いの小娘としか見られないだろう少女が、王太子様に会いたいと嘆願するのだ。

そんなこと、本当に“神の力”なしには、あり得ないだろう。

わたしには、ジャンヌの背中は頼もしくもあり、ジャンヌのこれからを考えると、とても不安だった。

「ロベール・ドゥ・ボードリクール隊長にお会いしたいのです。“神の声”のジャンヌ・ダルクが来たとお伝えください」

警備の兵士が訝しげに「またか」という顔をする。

「会えるとは限らんぞ」そう言い残して城内へと消えていった。

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