†神様の恋人†
わたしは準備万端整えて、振り返った。

「……ミシェル様。素敵なご紳士です!!」

オベールさんが笑顔で大きく拍手する。

カミーユは驚いたという様子で固まっていたけど、すぐにいつもの皮肉気な笑顔で言った。

「上出来だ。ミシェル」

口ひげのなくなったオベールさんが誇らしげに自分の鼻の下をさする。

黒のターバン風の帽子に髪を隠し、オベールさんの口ひげを無理矢理自分の鼻の下に接着剤で固定した。

自分でもやり過ぎかも…と不安になったけど、オベールさんの拍手の雨あられに多少なりとも自信がついたわたしは、ふと言ってみたくなってカミーユを振り返った。

「ねぇ。わたしが男装しなくても、カミーユが女装して娼婦になりきればいいんじゃない?」

全身固まったオベールさんの姿を横目に、わたしはズイとカミーユに歩み寄った。

カミーユは呆れたように片手で顔を覆って言う。

「オレの図体で女が務まるわけがないだろう?」

…まぁ、たしかに、カミーユは身長180センチはありそうだもんねぇ。

でもとっても美形だから女装も似あうなんて思ったのは言わないでおこう。

「…納得」

「だろ?」

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