†神様の恋人†

娼館の女

娼館のある路地裏は狭くて、酒屋や娼館などのちょっと怪しい店が並ぶ通りだった。

もう辺りはすっかり暗くなってしまっていたけど、酒屋から漏れるほんの少しの明かりを頼りに歩く。

ジャンヌにはクロエおばさんにことづてを頼んで、男装する前に今夜出かけることを告げていたけど今頃心配しているかもしれない、と後ろめたい気持ちになる。

「…クロエおばさんびっくりしてたなぁ。まさかわたしとカミーユが一緒に出かけるなんてね」

……きっと、ジャンヌも今頃。

「ミシェルが『ここは酒屋でも娼館でもないの』って言った時、正直驚いた。オレの心を全て見透かされたような変な気分だった。オレは酒と娼婦でうっぷんを晴らしていたっていうのに、こんなに真っ直ぐな子がいるんだってね。その真っ直ぐさで4年前に会ったミシェルを思い出した」

星の下、坂道で立ち止って振り向くカミーユ。

「…カミーユ……」

「あんまりにも真っ直ぐだから…いじめたくなった」

カミーユの手がわたしの頬に伸びてくる。

……トクン…と心臓が撥ねあがって、変に苦しい。

「…カミー」

「…ヒゲがずれてる」

……え…?

カミーユがわたしの口ひげをつけ直す。

…そ、そうだ。わたし男装してたんだった……!

妙な想像をして真っ赤になったわたしにカミーユがいたずらっぽく顔を寄せた。

「…なんか期待した?」

「…ぜっんぜん!!!」



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