†神様の恋人†
そして首に回した腕を解くと、まだあどけない笑顔で話しだした。

「いいわ。あなたには特別に教えてあげる。……わたし、結婚してるの。親が勝手に決めたお金のための結婚よ。でも相手はわたしのことを愛していないばかりか、男色の人だったの。つまり…女を愛せないの。それだけじゃない、彼は……悪魔よ…ううん、これ以上はおぞましすぎて言えないわ。とにかく、わたしは彼から逃げてきたの。そしてこの娼館にさらわれてしまった」

「さらわれたって…!?…で、では逃げましょう!!わたしがなんとか逃げる方法を…」

こんな若くて綺麗な人がさらわれてこんな所にいるなんて。

胸がぎゅっと切なくなった。

「…いいの。こんな所でも、彼といるよりはよっぽどましだわ」

「…そ、そんなことない!!」

「ありがとう。でも、いいの」

彼女はそう言ってわたしの胸に寄りかかってきた。

「…抱いてください。あなたならわたしは……」

栗色の髪が揺れて、わたしを見上げた。

彼女がキスを迫っているのがわかる。

これ以上は……無理だ。

「…あ、あなたの元恋人のカミーユが…あなたを心配しています。どうか、こんなことやめてください…」



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