無口な王子様

「それにしても和也くん、もったいない事したよねー。亜由美の元カレもそうだけど!」

私は再びミシンを踏みながら相槌をうつ。

「亜由美さ、アイツの為に料理勉強したりしてたんだ。超偉くない?」

「そうだね。いい奥様になれたのにね。」

「ちょっと!これからいい奥様になるんだから!ねえ、慶たん。」

亜由美は慶太の顔を覗き込んだ。

「ノーコメント。」

私がそう言うと、

「慶たんは恥ずかしいだけだよねぇ。」

と、亜由美は慶太の頭を撫でた。

私には慶太がニヤリと笑ったように見えて、思わず笑ってしまった。

「ちょっと!凛!何笑ってんのよ!」

亜由美は私を睨み付けた。
けど、その口元は笑っていた。
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