Libra ~揺れる乙女心~
思い出す。
初めて鈴子を抱きしめた日のこと。
こんなに細いのに、俺達の為に重い荷物を運んだり
洗濯をしてくれているんだと、感動した。
俺は
野球で疲れていても、鈴子を抱きしめると元気になれた。
抱きしめることができなくなっても
俺は鈴子の感触を思い出しては、癒された。
同じ感触。
同じ匂い。
同じ温もり。
やっぱり好きなんだって改めて感じてしまう。
もう離したくない。
離さない。
頼むから
振り解いてくれ…
じゃないと、俺
自分が止められない。
中庭と続いている廊下は
風がよく通る。
消えかけた蛍光灯の白い色が気になった。
目を閉じても、そのチカチカした蛍光灯の光が
俺の目の中に伝わる。
鈴子…
お前の気持ちがあの蛍光灯のように不完全でも構わない。
消えかけて、また点いて…
弱々しい光でも構わない。
少しでも俺を好きな時間があるなら、
少しでも隆介よりも俺を好きな瞬間があるなら…
俺はそれで満足だから。
俺の彼女に
戻って欲しい。