Libra ~揺れる乙女心~
右ポケットの中からボールを取り出して、空高く投げた。
真っ直ぐに落ちてくるボールを素手で掴む。
「隆介!!」
校舎と校舎に挟まれたこの場所は声がよく響く。
「なんだよ、鈴子。」
本当は誰かにそばにいて欲しかった。
鈴子が俺を探しに来てくれたことが嬉しかったのに、わざと冷たいことを言う。
「一人にしてくれないか…」
俺はもう一度ボールを空へ投げた。
「大丈夫?ごめんね。何か力になれることあったら、いつでも言って!」
少し寂しそうに、でも優しい声で鈴子は言った。
そして、ゆっくりとその場を離れようとした。
「おい!」
俺は自分でも驚いた。
声をかけるよりも前に俺の体は鈴子と重なっていた。