Libra ~揺れる乙女心~



右ポケットの中からボールを取り出して、空高く投げた。



真っ直ぐに落ちてくるボールを素手で掴む。




「隆介!!」




校舎と校舎に挟まれたこの場所は声がよく響く。




「なんだよ、鈴子。」


本当は誰かにそばにいて欲しかった。


鈴子が俺を探しに来てくれたことが嬉しかったのに、わざと冷たいことを言う。



「一人にしてくれないか…」



俺はもう一度ボールを空へ投げた。





「大丈夫?ごめんね。何か力になれることあったら、いつでも言って!」





少し寂しそうに、でも優しい声で鈴子は言った。

そして、ゆっくりとその場を離れようとした。




「おい!」



俺は自分でも驚いた。


声をかけるよりも前に俺の体は鈴子と重なっていた。








< 124 / 180 >

この作品をシェア

pagetop