Libra ~揺れる乙女心~
出会い
コントロールに磨きがかかると、面白いように三振が取れた。
スピードは、それほど速くはなかったのに、俺は中学の頃には、名の知れたピッチャーになっていた。
言い訳じゃないけど、
スピードを磨くには、トンネルの壁は物足りなかった。
あまり本気で投げると、トンネルが崩れてしまいそうだったから。
実際に、そのトンネルは今はもうない。
ある日そこへ行くと、崩れて無残な姿をしていた。
中学になり、何度か練習試合をした相手チームのピッチャーと友達になった。
向こうは友達だなんて思えなかったかも知れないな。
俺は自分から話しかけることもなく、挨拶を交わすくらいだったから。
俺の中では、それはもう『友達』だったけど。
桜井健太って奴で、俺はそいつの投げる姿が好きだった。
とにかく嬉しそうに投げる。
もともと、かわいらしい顔をしているせいかも知れないが、笑顔で投げているのかと思うくらいだった。
野球を愛していることが、見てすぐにわかった。