Libra ~揺れる乙女心~
「・・・健太。背中痛くない?」
少し視線をずらしたまま、話しかけた。
返事がくるまでの時間はとても長く感じて、私は落ち着かず自分の爪のネイルを触っていた。
「・・・鍛えてるから痛くない。・・・ってのは嘘で、慣れると結構気持ちいい。」
健太は空を見つめながら笑った。
久しぶりだった。
健太の笑顔は最高。
かわいい笑顔は、見ているだけで幸せになれる。
やっぱり健太を失いたくない。
また、昔みたいに一番近くにいさせて・・・
「隆介いなくなって、寂しいんだろ?鈴子。」
健太・・・
健太気付いてたの?
「え・・・そんなことないよ!何言ってんの、健太。」
心の中まで見透かされているような感じで、何を言っても嘘っぽかった。
健太はゆっくりと立ち上がり、私の腕を引っ張った。
「ちょっと、歩かない?」
立ち上がった私は、さっき隆介に感じたドキドキに似たドキドキを感じていた。
お好み焼き買ってくる、と言い、健太は周りの冷やかしの声にも動じずに歩き出す。
みんなの心の中は見えないから。
誰が誰を好きなのかよくわからない。
隆介に恋してる子もいれば、健太に恋をしてる子もいる。
背中に突き刺さる視線が痛かった。