Libra ~揺れる乙女心~
「健太…話がある。」
帽子を前後ろ逆にかぶった健太が優しい顔で振り向いた。
そんなに優しい顔をしないで。
言えなくなるから。
また甘えてしまいたくなるから。
「お待たせ!鈴子!帰ろっか!」
校門の前で待つ私の手をいつも通りしっかりと繋ぐ。
健太は何も気付いていない。
それも、気付いてる?
珍しく沈黙の時間が続く。
絡めた指から緊張が伝わってきた。
「鈴子、俺…待つからさ!!」
私が言葉を発する前に、健太が言った。
とびっきりの笑顔で、
泣けてくるくらいの優しい声で…
「ごめん!健太。私、まだ迷ってる。健太のこと大好きだけど…」
いつの間にか、繋がれた手は離れていた。
「俺を好きでいてくれるなら、俺はそれでいい。迷ってるのは、俺の責任だから…俺、頑張るから!!」
甘えたい。
でもだめ。
健太を傷付けることになる。
突き放さなきゃ。