Libra ~揺れる乙女心~
中学に入ってからは、俺を見に来る女の子や高校の監督がいた。
俺は、女の子に興味がなかったわけではないけれど、男子と女子の違いもよくわかっていなかった。
告白をされても、俺は「付き合う」ってことがよくわからなくて、友達なら…なんて返事をしてしまったこともある。
その日の放課後に、女子数名に呼び出されて、説教されたっけな。
モテることは、うれしいことだけど…俺は、正直まだ恋って何かもわからなかった。
自分が一番幸せだと感じる瞬間は、野球をしている時だった。
ボールを指に挟み、バッターと向かい合うあの瞬間が、俺のすべてだった。
俺には、自分の球が見えるんだ。
思った場所にしっかりと飛んでゆく自分のボールが…
それは、うぬぼれや、自慢でもなく、天狗になっていたわけでもない。
ただ、自信があっただけ。
自分の努力は自分が一番わかっているから。
誰にも知られていない俺の努力を俺は知ってる。
だから、俺は 誰にも負ける気がしなかった。