天然なあたしは悪MANに恋をする
20回目の失恋
ガタガタンっと、机と椅子の脚が床を擦る音が盛大に響いた

「いたたっ」

あたしは床に両手をついて、ぶつけた膝小僧に目を落とした

「馬鹿」

頭上から、素っ気ない声が振ってきた

あたしは肩から落ちてくる長い髪を耳にかけながら、顔を上げると、菅原 蓮耶が呆れた表情で見下ろしていた

「ふう」と鼻から息を噴射して、机に肘をつくと視線をあたしから外す

「あの…あたし、レンと…」

「無理」

「まだ最後まで言ってな…」

「無理っつったろ」

レンが窓に目を向けたまま、口を動かした

感情のこもってない声で、あたしに返事をする

一生のうち、あたしはレンからの拒否を何回耳にしたら、この恋心を諦められるのだろうか?

『好き』という気持ちは、簡単に生まれるのに、『好きな人』と想いを共有できるのは難しい…と、思う

「あ、じゃあ一緒に…」

「帰らねえーよ」

あたしは立ち上がって、スカートについたほこりを手で軽く払った

床にぶつけた膝小僧が、赤く腫れていく

こりゃ、痣になりそうだなあ

教室の窓から差し込む夕日で、レンの柔らかい栗色の髪が照らされている

思わず触れたくて伸びた手を、レンの頭が動くのを察知して、すぐに引っ込めた

「触るな」

「えへへ」

あたしは苦笑いを浮かべて、腰をくねらせた

「ミズ、用がないならさっさと帰れ」

レンがあたしを一睨みしてから、窓に視線が戻っていった

「用ならあるよ。セイちゃんとリンちゃんとお茶会をするの。今日のお菓子はねえ。ポッキー! 食べる?」

あたしは自分の席に戻ると、鞄の中からコンビニで買った赤い箱を出した

「いらねえよ」

「美味しいよ? レンは甘い物が……」

「いらねえ!」
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