天然なあたしは悪MANに恋をする
幼馴染が彼氏になる
「ちょ…レン、夕食の準備をしないとぉ」

あたしは今にも、ベッドに押し倒そうとしているレンの腕の中でもがいた

「嫌だね。俺、これからバイトに行かなくちゃなんだから。それまでミズと過ごす」

「そう言われても…って、あ、執事喫茶?」

あたしの素っ頓狂な叫び声に、レンが「はあ」と深いため息をこぼした

「思い出させるなよ。憂鬱になるだろ」

「見てみたいなあ…レンの執事姿」

あたしは執事の制服を着て、接客をするレンを想像した

でも…あたし以外の女の子が、レンにいろいろとしてもらっているのかと思うと…なんか、ちょっと嫌だな

いくらバイトでも、レンの執事姿に惚れている女の子は多いと思う

「俺は見せたくないね。あんな格好悪い姿なんて…」

「そうかなあ? 絶対に格好良いと思う。人気があるんでしょ? だから店長さん…だっけ優香さんがお迎えに来てくれるんじゃないの?」

「迎えに来なくていい!」

「顔に傷のある執事も…きっと胸キュンってなるんだろうなあ。あたしのために怪我をしてくれた執事っていう設定かなぁ」

あたしはレンの頬にある傷に触れた

レンはむすっとした顔になると、ぷいっと横を向いてしまう

「んで、わかるんだよ!」

「え?」

「ご主人様のために怪我をした執事っていう設定だって、なんでわかったんだよっ」

「なんとなく…そうだったら、女の子は嬉しいかな?って」

「俺は嬉しくも何ともねえ」

レンが不機嫌な顔をした

「おにぃちゃぁーん」

レンの部屋のドアが少しだけ開くと、地を這うような声が室内に響いた

「ああ? んだよ…」

レンのお母さんが、片目だけドアから出すと、じろっとレンを睨んだ

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