天然なあたしは悪MANに恋をする
「いってえな」

立宮先輩が後頭部を抑えて振り返ると、英語教師の立宮先生が腕を組んで立っていた

「あ…兄貴」

「立宮先生と呼べ」

「ってか、なんでここにいんだよ」

「それは俺のセリフだ。これからこのクラスは英語の授業なんだ。どうでもいいヤツは出ていけ」

「あ、じゃあ…瑞那、行こうぜ」

立宮先輩がまたあたしの手首を掴むとぐいっと引っ張った

「教室を出て行くのは、お前一人だ。馬鹿者」

立宮先生が教科書の角で、立宮先輩の頭をガツンと叩いた

「いってえつうの」

「真面目な生徒を、お前の都合で振りまわすな」

「うるせえなあ。俺の勝手だろ」

「ああ、お前はお前の勝手に生きればいい。だが、そのせいで真面目で素直で、可愛い生徒をお前の手によって汚されるのは、教師として見ていられない。だから、お前だけがこの教室を即刻退去しろ」

立宮先生が、立宮先輩の首根っこを引っ掴むとずるずると引きずって廊下に出した

「デートに誘いたいなら、放課後にしろ」

ガラっと立宮先生が、教室の扉を閉めた

立宮先輩の姿が見えなくなると、あたしはふうっと長いため息をこぼした

「大丈夫か?」

教壇に立った立宮先生が、あたしに声をかけてきた

「え? あ、はいっ。すみません。すぐに座ります…」

あたしは長い黒髪を耳にかけると、急いで自分の席につこうとした…が、クラスメートの机に足を引っ掛けて、派手に躓いてしまう

「いたたっ…す、すみません」

あたしの顔に火がついたのではないか、と思うくらい、熱くなった

昨日の放課後にぶつけた膝小僧と同じ個所を床にぶつけたあたしは、痛くて涙目になった

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