天然なあたしは悪MANに恋をする
あたしはポッキーを持って廊下を走った

セイちゃんとリンちゃんが待つ3年生の教室に向かった

2人とも、3年生の先輩を彼氏にもっている

すごく綺麗で大人びてて、お洒落な2人だから、男子生徒にはモテている

2人とも、入学して間もなく先輩に告白されて、彼氏ができたって言ってた

羨ましいなあって思う

あたしは何度、告白しても振り向いてもらえないから、セイちゃんやリンちゃんが羨ましい

階段を駆けあがり、廊下を右に曲がろうとしたところで、あたしは何かにぶつかった

黒い影で何がなんだかよくわからないまま、あたしは身体のバランスを崩して、階段のほうに身体が投げだされるのがわかった

あ…落ちる?

あたしは身体が浮遊するのを感じつつ、何もできない己の身体が落ちて行くのをただ待った

その時、ぐいっと腕を引っ張られて、身体が何かに包まれた

「あぶねえ。危機一髪だぜ」

ふうっと、長い息を吐き出した男子の息があたしの耳に吹きかかった

「あ…す、すみませんっ。あたし…」

あたしは男子の腕の中から離れると、頭を深く下げた

またやってしまった

あたしはすぐに何かぶつかったり、躓いたりして転ぶ

一人で転んで怪我をするぶんには、自業自得で終わるけど、誰かを巻き添いにしてしまう時は、どうしたらいいかわからなくなる

「あんた、怪我なかったか?」

「は、はい。あたしは平気です。あ、でもあの…ぶつかったのはあたしで。すみません」

頭に血がさがってくるのを感じたまま、あたしは自分の上履きをじっと見つめた

「俺は平気。あんた、危なかったな。もう少しで、大怪我だったぜ」

男子が明るい声であたしの肩を叩いてくれる

「す…すみません」

「だから謝るなって」

男子がにこっと微笑んでくれる

「立宮、忘れモン!」

3年の教室から顔を出した男子が、あたしの前に立っている男子に向かって、筆箱を投げてきた

『立宮』って言うんだ、この人

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