約束
 野木君のいったようになかった事にして良いのか、彼女に話すべきなのかも分からなかった。

考えれば考えるほど、自分で自分が嫌になる。

「どうしたの? 暗い顔して」

 その声に促されるようにして顔をあげた。

 そこには線の細い少女の姿があった。彼女の髪は風によってゆっくりと巻き上げられる。彼女は乱れた髪の毛を整えていた。彼女の髪はすぐに元に戻る。

 私が固まっていたからか、彼女が話を切り出した。

「ものすごい暗い顔して歩いているのを見かけたから、どうしたのかな、と思って。迷惑だったらあっちにいくからそう言ってね」

 こんな情けない私に声をかけてくれたからか、私の目頭が熱くなっていく。視界が滲み、目から涙があふれてきた。

 泣いたらいけないのに、私は一度出てしまった涙を止めることができなかった。
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