約束
 私は泣きながら、さっきまで考えていたことを全て彼女に話していた。

 彼女は苦笑いを浮かべながら、白地にピンクの花がプリントされたハンカチを差し出してくれた。

「今朝、彼からほのかにコーヒーの匂いが漂っていたのはそういうわけだったのね」

 私は百合の言葉を聞いて、余計に泣きそうになってしまった。自分があまりに情けなかったからだ。

「ごめん。今の冗談」

 私がすごい顔をしていたのか、百合は慌てた様子で訂正した。そして、軽く咳払いをする。

「野木くんの話は別に断ればいいでしょう。もちろん付き合いたいなら、別だけど」

「そうなんだけど」

「木原君に知られたことがそんなにショックだった?」

「告白がショックだったんじゃなくて、彼は私のことなんてどうでもいいのかなって今更ながらに気づいたから。それに友達の好きな人だから」

「友達というと野村さんか」

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