約束
 窓の外を見るといつの間にか空は灰色の雲に覆われていた。太陽の明るい日差しが注いでいないどころか、今にも雨粒が零れ落ちそうな天気。

 木原君が出て行ったときにはそこまで天気も悪くなかった。想像以上に長い時間ボーっとしていたのだろう。


 一雨くるかもしれない。家の中でいつも窓が開いているところはどこだろう。まずは家の戸締りを確認しておこうと決める。

 私の部屋の窓は閉めてある。姉の部屋とお風呂場、あとは。そこまで考えたとき、動きを止めていた。木原君の部屋はどうなっているんだろうと思ったからだ。

 勝手に部屋を覗いていいのかな。でも、雨が降り出して部屋の中に入り込むよりはマシかもしれない。でも、嫌がる可能性もある。彼の部屋に入っていいという答えと、悪いという答えが交互に襲ってきた。

 私があれこれ考えるより、本人に電話で聞くほうが良い気がした。

 そんなことを考えているうちに、窓で何かがはじけるような音が響いていた。窓には今までなかった水の塊が無数散らばっている。雨が降り出したのだ。

 他の場所から先に窓を閉めようと思い、立ち上がる。そのタイミングで机の上においている携帯電話が音楽を奏でていた。発信者を見ると、飛びつくように通話ボタンを押していた。

「ごめん。窓を開けっぱなしにしていたかもしれない。悪いけど、確認してくれるかな」
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