約束
「大人? 大学生とか?」

 思わずそれに過剰反応してしまった私を見て、また困ったように笑う。

「あれも噂。実際は違うの」

 今まで見たことのない彼女の姿に新鮮味を感じながらも会話の中身が見えてこない。一方の晴実は興味津々と言いたそうな顔をしている。

「そういえば、小学校は同じだったの?」

 二人の中学が違うことは知っていた。私がそう思ったのは晴実と木原君が同じ小学校ということを知っていたからだ。

 百合と木原君の家は同じ公立中学だったので、そんなに遠くないのだろう。

「中学は別だよ。私、小学校の卒業と同時に引っ越したの」

「私は中一のときに引っ越してきたから」

 晴実と百合が順に答える。二人は入れ違いになったというわけなのか。

「私は中学のとき、塾の先生と付き合っているという噂があったの」

 百合は肩をすくめる。

「本当に?」

「実際にはそんなことないし、誰ともつきあったことはないの。ただ、変な先生がいてね、それで私をじろじろ見ていたのは知っている。それで、まあいろいろあったのよ。つきあってくれと言われたり」

「何歳くらいの人?」

「二十四とかその辺りだったと思う。はっきりとは覚えてないけど。それは断ったんだけど、向こうがあきらめてくれなくて、大変だったの」
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