約束
 彼は何かを言おうとした。だが、次の瞬間、私の視界に飛び込んできたのは真っ白な壁だった。

 少し遅れて、それが私の部屋の壁だと気づいた。

 体を起こし、髪の毛をかきあげた。

 すごく懐かしい夢だった。私が幼稚園の年長になったときだったと思う。あれからもう十年ほど経つ。

 私はベッドから降りると、窓辺に行く。そして、締め切ったブルーのカーテンから窓の外を覗く。

 彼らはあれからどうしているんだろう。

 祖母が亡くなり、祖母の家は管理が難しいとのことで売却された。祖父は私が生まれる前になくなっていたので、顔も知らない。

だから、身内がいなくなったあの土地に行くことは一度もなかった。当然のように彼らと偶然会うこともない。

 私は彼に会いたいと思っていた。何も懐かしい記憶を語り合いたかったわけじゃない。謝りたかったのだ。

お母さんが出来ればいいと心から思う気持ちは嘘ではなかった。だが、私は良かれと思い、今から考えるといい加減と言われてもおかしくない事を言ってしまったのだ。
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