約束
「心配しなくて大丈夫だよ。断るから」


 彼は笑顔を崩さないが、さっきの言葉がきかれていたのは確かで、そのことを考えると目が熱くなってきた。

ただ動揺していただけなのに、どうして勘違いをされないといけないのだろう。リビングを飛び出して泣きたい気分だった。

「別にいいじゃない。力仕事やってくれそうだし」

 と不満そうに答える姉。彼女は私が嫌がっている前提で話を進め、誤解だと言い訳するタイミングを完全に奪ってしまっていた。


姉はまくし立てるように言葉を続ける。

「まあ、決まったことなんだから諦めなさい」
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