約束
友達と一緒に見送るのもそれはそれでよかったとは思うのだけど、一緒に見送りしてくれる人は誰もいなかった。

 木原君は紙袋や本などを丁寧に詰めていく。私はその様子をじっと見ていた。もう木原君の荷物はあまり残っていない。一馬さんが使うものだけ残し、いらないものは実家へと送ったようだった。これが彼の最後の荷物なんだろう。

 彼は開けっ放しになっていた旅行バッグのチャックを閉める。彼の乗る電車まで三十分くらい。

「そろそろ行こうか」

 そう言って部屋を出ようとした私の手を木原君が掴んだ。

 彼が私に差し出したのは小さな紙袋だった。
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