ひなたぼっこ~先生の、隣~
「高橋、遅いよ!」
麻生の自宅に着く頃には、最初の着信から一時間近く経っていた。
馴れた感じで助手席に乗る麻生。
「みんな帰ってきたんでしょ?」
「あ…あぁ。さっき出迎えに行ってきた」
「楽しかったって?」
「さぁ…元気そうだったから、楽しかったんじゃないのか」
「そっか…」
小さな声で言うと、麻生は黙って窓の外を見つめた。
横目でチラっと様子を伺うと、その表情はどこか寂しそうに見えた。
本来なら、麻生も他の生徒と一緒に修学旅行を楽しめた。
でも、それは母親の自殺未遂によってできなくなってしまった。
ここ3日間一緒にいることが多かったが、麻生は特に気にしている様子はなかった。
でもやっぱりー…
修学旅行に参加したかったんだと思う。