ひなたぼっこ~先生の、隣~
「…引っ越す…?」
母親の口から出た言葉は、想像できなかったことだった。
「はい。主人の広島への転勤が決まりまして…」
広島…この間、修学旅行で行った場所。
「はじめは、主人が一人で単身赴任すると言っていたんですが…今の状態だと、私一人ではなんともー…」
「そう…ですか…」
「ただ…」
「…ただ?」
「楓が…何て言うか…」
俯きながら、さっきよりも小さな声で言った。
「まだ伝えてないんですか?」
「どう伝えていいのか、わからなくて」
「…」
「それで今日は高橋先生を伺ったんですが…何かあったのですか?」
ドキ
「え…」
「ここまで生徒の子に案内してもらったんですが、慌ててた様子だったんで」
案内してくれたのは、妹尾だ。
もしかして麻生の母親が職員室に来ていたら、あの話を聞いて責任を感じたと思う。
「いえ…何もないですよ」
妹尾が機転をきかせてくれた、おかげだ。