ひなたぼっこ~先生の、隣~

手に持っているラーメンを見つめながら、そんなことを考えていると、隣にいる先生がブツブツと何か言い出した。

「何か腹に入れとかないと、放課後までもたないしな…よし」

「え…って、…っ先生!?」

「おばちゃん、ありがとね。また、買いに来るから」

"はいよ"と言う、おばちゃんの声が遠くから聞こえる。


さっきまで売店にいたはずなのに、先生に引っ張られどこかに連れて行かれる。



何が何だかわからず、先生の後を黙って付いて行くと、着いた場所は家庭科室。


「こっち」

先生が手招きをしながら、小さな声で呼んでいる。

小走りで呼ばれた方へ向かうと、そこは家庭科準備室。

家庭科室と繋がっているが、普段は生徒は立ち入り禁止。

「あそこだと、他の生徒にバレるからさ。いいだろ?」

「でも…生徒は立ち入り禁止…」

「内緒だよ。てか、俺がいるから大丈夫だろ?それより、早く作らないと昼休み終わっちまう」

そう言うと、先生は何かを探し始めた。


「…?」

あ…

先生の行動を見て、何が欲しいのかわかった。

「お、さすが」

探していたのは、鍋とさいばし。
それを渡すと、先生はニカッと笑った。


「ありがとな」

くしゃっと泰葉の頭を撫で早速、料理を始めた。

「いえ…」

乱れた髪を整えていると、さっきまで触れていた先生の体温を少しだけ感じた。



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