私と彼の関係
第十一章 散りゆく花火
 あでやかな朝顔の印刷された浴衣に、紺色に白で花を印刷した少し落ち着いたもの。さっきから手に取るけど、なかなか決まらない。


「どれがいいかな」


「どれでも似合っているよ」


 あいにつきあってもらい、浴衣を買おうとしたけど、なかなか決まらない。


 似合ってないといわれるより似合っているといわれたほうが嬉しいけど、正直困ってしまう。


 買うのは私なので、最終的に私が決めないといけないということなのかもしれない。


「後は宮野君の好みに合わせて選べば? 好きな色とか、柄とか」


「そんなの知らない」


 宮野君の家族のこと、幼馴染のことといったことは知っているのに、私は肝心の宮野君の好みを何も知らなかったのだ。


 何が好きなのか、何が嫌いなのかということも私の前で出したことはない。


「やっぱり落ち着いた色がいいのかな」


「意外とこういう可愛い色も好きだったりして」


 あいが指したのは明るいピンクの浴衣だ。でも、花がピンクより、生地がピンクの場合は好き嫌いもかなり出てきそうな気がする。


 相談しながら迷いに迷って選んだのは紫で藤の花が描かれた浴衣だった。


 ほかのものに比べると少し地味だったが、可愛かったし、宮野君はこういうのが好きそうじゃないかという話になったのだ。


 確かにあまり派手なのは好きじゃなさそうな気はする。浴衣なんてある程度大きくなって初めて着る。
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