王子様はカリスマホスト
「交通事故に遭ったことは覚えてるかい?」

先生の言葉に、あたしは首を振った。

先生が、叔父さんと顔を見合わせる。

「交通事故って、あたしが、ですか?」

「そうだよ。君は、高校の入学式に出るために、お父さんの車に乗っていたんだ。お母さんも一緒にね。お父さんが運転席。お母さんは助手席。君は後部座席にいた」

淡々と話す先生の顔は、無表情だった。

「入学式に遅れそうで―――お父さんも少し慌てていたのかもしれない。だけど、お父さんにスピード違反なんかはなかったんだ。ただ―――カーブを曲がろうとして、その反対車線からスピード違反した車が直進で突っ込んでくるのを、よけきれなかった」

どくんと、心臓が嫌な音を立てた。

布団を、ギュッと握りしめる。

「―――一瞬の出来事だったと思うよ。君たちが乗った車は電柱に衝突し―――突っ込んできた車もガードレールにぶつかって止まった。その車を運転していた男は即死。そして、君のご両親も、病院に運ばれたけれど―――」

「いやあ―――!!」

あたしは、耳を塞いだ。

嘘だ。

嘘だ。

だって、あんなに喜んでいたのに。

あたしが高校に合格したことを。

まるで自分のことのように2人とも喜んでくれていたのに。

入学式が終わったら、ホテルのビュッフェで食事しようって話してたのに。

楽しみに、してたのに――――――

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