【短編】 ききたいこと
Ⅲ わたしというもの
 ***

 ―――あれから二ヶ月が経った。

 二ヶ月の間、先生とのメールはなんだかんだで続いていた。
 先生の授業がない月曜日と金曜日、私は先生にメールを送った。
 といってももちろん、勉強に関する質問メールばかりで、友達とするような他愛ない会話はしたことがない。

 けれどときどき、


[佐々倉は勉強熱心だな]


 ありがとうございましたと返して、やり取りが終わったつもりでいると不意に、そういったひと言メールが返って来たりする。
 初めてそのメールをもらったときは、心臓が口から飛び出そうになるほど驚いた。おかげでその日の晩は興奮で明け方まで眠ることが出来ず、翌日大遅刻し、担任に大目玉を食らった。

 メールが終わって、完全に油断しきっているときのそれでは不意打ちもいいところである。
 やっぱり罪な人、と先生が黒板のほうを向いているとき、ちょっぴり睨み付けてやった。

 けれどもちろん、嬉しいことにかわりはなくて、勉強以外でもらったメールは別フォルダに保存プラス保護までしてある。

 変態くさいし、若干ストーカーのようなにおいもするが、気にしない。


 私にとってはかけがえのない宝物なのだから。
 
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