【短編】 ききたいこと
 
 先生に近づけるよう、彼にふさわしい人になろうと決意したものの、

 "すこしでもいいから先生と繋がっていたい"

 と、欲に負けてしまった弱い私は先生とのメールを止めることが出来なかった。

 だけど、ちゃんと返事をかえしてくれる先生も、悪い……と思う。

 あんなに丁寧に説明してくれたら、あんなに優しくしてくれたら、離れたいと思うほうが嘘だ。
 週二回だけでいい。メールのやり取りが一回で終わってもいい。
 二人だけで繋がっていられる時間が欲しい。

 授業中は私は担当クラスの一生徒に過ぎなくて。それは、メールをしている間もきっと一緒だけれど、私のためだけにノートを作ってくれて、私のためだけにメールを送ってくれる。

 私のためだけ。
 私がメールを待ってる間、先生は頭を使ってくれて、その時間、先生は私だけを思ってくれている。

 ……なんて、思い上がりも甚だしいけれど、だけど、ちょっとはそんな時間もあると思うのだ。

 どう書けば佐々倉に伝わるのかなぁ、とアゴにシャーペンをあてて悩む先生が思い浮かぶ。
 それだけで、いつどんなときでもテンションはマックスに達する。頬が緩んでだらしない。

 
「―――おい、佐々倉」

< 16 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop