【短編】 ききたいこと

[俺からメールしていいものか悩んだんだけど、どうしても気になったから…。

昼休みの話、聞いちゃったんだ。盗み聞きするつもりはなかったんだ。ただその、聞こえてしまったというか。

塾、行ったのか?
電話出なかったってことは、行ったんだよな。
ああいや、俺は別に佐々倉が塾に行ったのか確かめたかったんじゃなくて、その―――]

 スクロールバーを下げて―――次の瞬間、私は呼吸が出来なくなった。

 画面にぽたりと雫が落ちる。


[だいじょうぶかなと思って]


 とめどなく溢れる涙が頬を伝って床に落ちる。

 言って欲しいと望んでいた言葉。

 それなのに、いざ言われると嬉しい以上に苦しいなんて……予想してなかった。 

 先生は、優しすぎる。

 涙と一緒に、好きがどんどん溢れてくる。

 それなのに、こんなに好きなのに、想いを伝えられない歯がゆさが胸を締め付ける。

 もどしすぎて、喉の奥が熱いよ、先生…………っ。



 私は時計を見上げた。
 十時半、ちょっと過ぎ。
 なにをしている時間だろう。
 もうすぐ試験だからテストを作っている最中かもしれない。

(……)

 私は呼吸を整えると、先生の番号を呼びだし、
 それでもしばし迷った―――

 しかし、私は通話ボタンを押した。


< 26 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop