【短編】 ききたいこと
 *


 いったい、なにを言いたかったんだろう。
 二度も言わなければならないほど、私は忘れっぽそうに見えたのだろうか。念を押さなければ不安だとでも思ったのだろうか。

 ……たぶん、そうではなかったと思うのだけれど。

 久しぶりの塾でも、そのことばかりが気になって来たはいいもののさっぱり頭にはいることなく家路についた。



 今日はめずらしく私の好物ばかりが食卓に並んでいた。

 得した気分でたいらげ部屋に戻って携帯を開くと新着メールが一通と不在着信が一件。
 私は先に不在着信の番号を確かめようと何気なく開いて―――

「ええっ!?」

 驚きのあまり、下手すると近所まで聞こえてるかもしれないくらいの大声を上げた。

 手がぷるぷると震えている。


(―――せ、せんせい、から?)


 私が塾に行っている間、先生から電話があったらしい。
 もしかしてと思いメールを開くと―――やはり先生からだった。


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