i want,


妙に落ち着いた気持ちのまま、あたしははっきりと言った。


「…うん」


一瞬みどはたじろいだが、すぐに踵を返して歩き出した。
その背中を見つめながら、第2ボタンに動揺しなかった理由を考える。


そんなのひとつだった。


あたしが欲しいのは、垣枝の第2ボタンなんかじゃないから。



あたしが欲しいのは、垣枝。

あの衝動を与えてくれる垣枝が欲しい。

あの視線さえ、あたしに向いていればそれでいいの。

あたしの五感全てがあの視線に支配される、あの感覚。


それだけが、あたしの欲してる全て。

それだけが、あたしの垣枝の全て。



あたしもまた、歩き出した。

夕日が目に染みて、少しだけ痛い。


でももう泣かない。
もう、逃げない。







…皆の所に戻ると、写真撮影が始まっていた。

思い出を形に残すため、至るところでシャッター音が響いている。
その輪から少し離れた所に、垣枝が座っているのが見えた。


垣枝の視線が動く。
二人の視線がかち合う。


あたしは、ニコリともせずにただ見つめた。

垣枝も同じ様にあたしを見ていたが、不意にあの小馬鹿にした様な笑顔を浮かべる。

そしてすぐに、視線を流した。

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