i want,




…ヒカル。

あの時の涙の意味を、あたしはずっと理解してなかった。

なんであんなにも苦しかったのか、なんであんなにも悲しかったのか、ずっと。


今ならわかるよ。


ヒカルは近くて、ずっとずっと近くて、そして、遠かった。


側にいても、足りない。

触れていても、足りない。

キスをしても、足りない。


多分あたしは、あの頃誰よりもヒカルの近くにいた。

そしてヒカルも、あたしの近くにいた。


でも決して、ひとつではなかった。


それがずっと、悲しかったんだ。



…ヒカル。


あたしはずっと、あなたが欲しかったよ。


どうやっても満たされない想いは、そうとしか表現できない。


…欲しかった。

ヒカルが欲しかった。

それはきっと、一番純粋で、一番残酷な想い。




あの夏のキスから、確かに始まった。

苦しみも、悲しみも、後悔も、全てが。


…でも、あたしは信じてる。


間違ってなかったって、信じてるよ。


今でも、ずっと。





信じさせてよ、ヒカル。














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