i want,
「ヒカルは?」
「ヒカルは…あたしには、心を開いてくれちょる。必要としてくれちょるもん」

修学旅行、夏の花火、図書館前の渡り廊下、そして、あの神楽。

きっとあたしにしか見せないヒカルが、そこにはいた。少なくともあたしはそう信じてた。

でもそんなあたしを、田口は冷笑で否定した。

「思い上がりだよ、矢槙」

田口の言葉が、脳を震わせた。
もう少しで手が出そうになったが、寸でのところで持ちこたえる。

唇を噛み、あたしはそのまま荷物を手に荒々しく立ち上がった。

相変わらず冷静な田口は、「帰るの?」と呟く。

あたしは田口を見下ろしたまま、震える声で言った。

「…思い上がりでもええ」

田口と目が合う。
やっぱりヒカルとどこか似ていて、嫌になる程悔しい。


「…あたしがヒカルを好きなんじゃけぇ、それでええ」


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