i want,

真実



……………

時計の針が一周回るのはあんなに遅く感じるのに、季節はどうしてこんなに駆け足なのだろう。

「秋過ぎて、冬きにけらしーしー…?」
「違うっしょ、『春過ぎて、夏きにけらし』だよ」
「あ、そっか。もー季節が季節だから間違えて覚えちゃったわ」

明日ある百人一首のテストの範囲を睨みながら、隣で綾がぼやく。その口元から吐き出される息が、うっすらと白みがかっている気がする。

中学生活も折り返し地点。気付けば中学に入って二回目の秋を迎えていた。

文化祭も体育祭も滞りなく終え、祭りの後の静けさじゃないけど、すっかり気が抜けてしまっている11月。あとは冬休みを待つばかりだ。

…そう思っていた。
今日、この瞬間までは。


「あれ?あお、何か落としたよ」

下駄箱から靴を取り出したその瞬間、綾の声と同時にパサッという乾いた音が聞こえた。

綾がしゃがんでその白い紙を拾う。あたしも眉間に紫波を寄せてそれを覗き込んだ。

校舎の奥から下校を知らせるチャイムが響く。
遠くで生徒の笑い声がした。

「…何これ」

< 226 / 435 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop