i want,
そんな歩夢を見ながら、頭の中を整理しようと息を吸う。

酸素が身体中を巡って、ようやく思考が動き出した気がした。

「…歩夢、」

泣きじゃくる歩夢に呟く。
歩夢の肩が、ピクッと揺れた。


「あたし、あんた達がしたこと許したわけじゃないけぇ」


そう言うや否や、あたしは階段を駆け降りた。歩夢の泣き声が一層大きくなった気がした。


許したわけじゃない。

そこまで大人じゃない。

でも嫌な胸騒ぎが、あたしを動かしていた。


ヒカルの冷たい瞳、声。

走りながらただ、ヒカルの声が脳裏に響く。


『大丈夫じゃけぇ』


…あの言葉の持つ意味が、この胸騒ぎの理由と一致したら。

心臓が嫌な音をたて続ける。
小さく首を振って、唇を噛み締める。


何もいらないから。
だからお願い。



ヒカルだけは、変わらないで。











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