i want,


変わらないものも、ある。


変わり行く世界の中でも、刻々と変化を遂げる想いの中でも、ずっと変わらないもの。



「俺はもう、お前を手放したりせん」




溢れる涙を拭うこともせずに、あたしはただ、ヒカルを見つめていた。



…あの時、簡単に別れを選んだことを、どれだけ後悔しただろう。

あたしがもう少し強ければ。
もう少しヒカルを信じることができたら。

何度も何度も考えた。


ヒカルともう一度会うことが怖かったのも、あの別れをもう二度と経験したくなかったから。

もう二度と、あの想いを感じたくなかったから。


でもヒカルは言ってくれた。


どんな関係でも、別れは言わないと。


例えもう、抱きしめあうことがなかったとしても。

それでも変わらない。
手放したくない。


「うん…っ」



…もう二度と、ヒカルを失いたくない。


それはあたしも、同じだった。



頷いたあたしの前で、ヒカルが小さく笑った。


その笑顔は、あの頃のものと何も変わっていなかった。


渡り廊下で見せた、あの愛しい笑顔と。

















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